「少女礼讃(しょうじょらいさん)」は写真家 青山裕企が、誰も知らない、ひとりの女性を撮影し続けている作品である。年齢、名前が明かされてない、SNSでの情報発信や、モデル・アイドル活動といったこともしていない、どこに住んでいるかも分からない、ひとりの女性。中学生のようなあどけない笑顔と、たまに見せる、驚くほど大人びた表情。小柄で、「女の子っぽい」髪型。しかし、あか抜けない服の中には成熟した体が隠されている……。2018年の夏に出会ったこの女性を、青山は毎週のように、圧倒的な量と質で、徹底的に撮影し続けている。青山はこの女性に出会った時に、眩いほどの“少女らしさ"を感じたという。それはこれまで「同級の女の子」を「少年」の気持ちで撮ってきた青山が、「大人」の眼差しを持ったことを意味する。数々の著名アイドルやモデルなどを撮影してきた青山が、この名もない女性に見出した“少女性"とはなんなのか。それは、これまで固定概念として語られてきた「少女らしさ」「少女趣味」といった枠からはみ出た、ありのままの美しさ。撮影ごとに異なる表情を見せ、撮影を重ねるほどに、生まれ変わる“少女"。撮影の度に別の誰かになり、撮影が終わるとまた誰でもないひとりの女性に戻る。繰り返し続ける、新しい“少女"との出会いと別れ。撮影者である青山にとどまらず、鑑賞者も巻き込まれていく、“少女"を介したパラレルでエンドレスな行為。「少女礼讃」は“少女"という存在があって撮ることができる写真であり、“少女"という存在そのものへ畏怖の念を込めた、祈りの儀式の記録である。